Spangle call Lilli line vol.1


今年1月に渋谷duoで行った10周年記念ライヴを収録したDVD『SCLLLIVE』をリリースしたSpangle call Lilli line。この作品はバンドのギタリストにして、ファッションや音楽、広告の分野で活躍するカメラマンでもある笹原清明が撮り下ろしたモノクロ写真集とのセットとなっている。8月21日から代官山のギャラリーSPEAK FORにて初の個展『eye』を開催する彼の表現世界について話を訊いた。

敢えて言うなら、ノー・コンセプトがコンセプトですね。



──今回リリースするSpangle call Lilli lineのライヴDVDに写真集を付けることになったいきさつを教えてください。
「Spangleの昔の作品は大坪(加奈:ヴォーカル)さんのイラストを使っていたんですけど、去年出した『PURPLE』から僕の写真を使うようになったっていう流れもあって、リーダー(デザイナーでもある藤枝憲)が決めました。“ライヴDVDをただリリースするのは面白くないから、モノクロでシックな写真集を付けようよ”って。最初はライヴ中の写真とかリハや楽屋風景のドキュメント写真集を作るのかなって思ったんですけど、“好きに撮っていいから”ってことで撮り下ろしの写真集を付けることになったんです。だから、写真は僕、デザインはリーダーっていう役割分担で、お互いのやり方に口出しをせずに作りました」

──Spangleの音楽と今回の写真集はミニマリズムが共通項にありますよね。
「音も写真も出発点は自分だし、どちらの表現も“余計な飾りはうっとうしいから必要ないし、ミニマルに”ってことを常々考えているので自然とそうなった感じですね。だから、今回の写真集はテーマもなく、自分は何を撮りたいんだろう? って考えた時、女の人と海と森を理由なくただ撮りたいと思ったので、それをただ撮っただけ。アートってコンセプトが大事なのかもしれないけど、僕は好きじゃないんですよ。だから、敢えて言うなら、ノー・コンセプトがコンセプトですね」
Spangle call Lilli line vol.2

作品が良ければ、どんな作品であってもいいんです。


──今回の作品はコンセプトさえもそぎ落としたミニマリズムが根底にあるんですね。
「中途半端なものだったらない方がいいし、コンセプトを設けるなら相当強いものじゃないと駄目だと思うので。誰とは言いませんけど、僕からすると中途半端なコンセプトの作品が多すぎるように思うし、それについて熱く語られても……みたいな(笑)。もっとも“作品から感じて取ってくれ”っていうのもイヤなんですけどね。その微妙なラインを保ちたいというか、“過ぎたるは及ばざるがごとし”っていうのが最近のテーマですね(笑)」

──ただし、今回の写真集はミニマルといいつつも、ページをめくっていった時の流れを考えた作品の並びになっていますよね。
「そうですね。雑にならないような、目が気持ちよくなるような並び。モノクロだし、情報量も多くないので、ぱっと波の写真が出てきたり、一瞬だけ街の写真が出てきたり、そういう流れを作って飽きないようにしたつもりです」

──写真にしろ音楽にしろ、今は情報量の多い作品が主流にありますすけど、ご自分で手にするものもそういう作品が多いんですか?
「バンドはメンバー3人の最大公約数が作品になっているだけで、Spangleをやっているからといって、エレクトロとかミニマルな音楽、洋楽ばかりを聴いているわけではないですよ。普通に歌詞がよかったり、カラオケで歌えるようなJ-POPも好きだし、作品が良ければ、どんな作品であってもいいんです」
Spangle call Lilli line vol.3

写真集を作りたいと思ったことがないし、作家になりたいわけでもない。


──自由に思うままに撮った今回の写真集に対して、普段、笹原さんが生業にしていらっしゃるカメラマンのお仕事は、クライアントがいて、撮る対象も決まっていて、そのなかでどう撮るのかっていう世界ですよね。そうなるとやはり発想も変わってきます?
「カメラマンの仕事では写真のセレクトに茶々を入れられたり、撮りたくないものを撮らされることもありますけど(笑)、アーティストの肖像権が取れれば、今回の写真集に入れてもいいっていうくらいのテンションで仕事もやっているつもり。むしろ、制約がある商業写真の方が好きですし、いい写真が撮れるかもしれない。僕、写真家の上田義彦さんが好きなんですけど、作品集より広告写真の方がぐっとくるんですね。それは自分にも言えることで、正直な話、今まで自分の写真集を作りたいと思ったことがないし、まして作家になりたいわけでもない。もっと言ってしまえば、デザイン科で写真を専攻したものの、美大に進学したのは高校時代に成績が悪かったのと絵を描くのが好きだったからっていう消去法の選択だし、美大に通うようになったら、絵や彫刻みたいにゼロから何かを作るのが苦手なことに気づいて。そんな時に写真、特に広告写真に興味を持つようになったんです。だから、ウーロン茶の広告でいい写真が撮れた方が僕にとってはうれしいですし、今回もたまたま機会があるからっていうくらいの気持ちで撮って、いい写真が撮れて楽しいなっていう」

(photo:今作に収録されている作品の一部。撮影:笹原清明)
Spangle call Lilli line vol.4

友達に気に入ってもらえるかどうか、名前やコンセプト抜きにいいと思ってもらえるか。


──笹原さんにとって、表現としての写真と音楽の共通項はどこにあると思いますか?
「写真は対象を借りて、作品を撮るわけですけど、音楽もバンドだからやっているところがあって、その辺のスタンスは一緒かな」

──自分以外の何か、誰かとの関わりから生まれるもの。それはコミュニケーション願望みたいなものなんでしょうか?
「寂しがりというか(笑)、人に会うのが好きというか。自分は外向的な人間ではないし、写真にしろバンドにしろ、人に会わなきゃいけないし、いろんなところに行かなきゃいけない。だから、そういう側面がありがたいなって」

──こと写真で達成感を感じる瞬間って?
「現像のプロセッサーからプリントが出てきて、それがすごくいい写真だったら最高ですね。仕事で必要に迫られて最近デジカメを買って、今回の写真集も予算の都合上デジカメで撮ったんですけど、やっぱり、フィルムの色が好きだし、現像している時に感じられる達成感はフィルムの醍醐味ですよね。ただ、フィルムかデジタルかも今となってはいい作品が出来れば、どちらでもいいと思ってます。あと、うれしいのは依頼の電話が来た時と人から褒められた時かな(笑)。もっと言ってしまうと、仕事は別にして、僕は音楽にしても写真にしても、周りの友達に気に入ってもらえるかどうか、自分の名前やコンセプト云々以前に作品に接して、いいと思ってもらえるかどうか。大切なのはそれだけですね」


●「SCLLLIVE」リリースを記念した笹原清明写真展「eye」開催
8/21(金)〜9/2(水)※8/27(木)定休
11:00〜20:00(最終日は18:00まで)
代官山GALLERY SPEAK FOR/東京都渋谷区猿楽町28-2 SPEAK FOR B1F
OFFICIAL SITE www.galleryspeakfor.com


Spangle call Lilli line
メンバーは大坪加奈(Vo)、藤枝憲(G)、笹原清明(G)。1999年より活動開始。2003年に現在の編成に。その音楽性は日本のみならず海外でも評価が高い。現在、1500部限定のライヴDVD+写真集「SCLL LIVE」が発売中。

OFFISIAL SITE www.lilliline.com
MySpace www.myspace.com/spanglecalllilliline/
笹原清明OFFISCIAL SITE www.sasaharakiyoaki.com

photo:石川ユーコ interview&text:小野田雄
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